【薬局M&A】M&Aの流れ(第5回)~ステップ10:引き継ぎ・PMI(統合)を徹底解説~

これまでの4回のブログでは、薬局M&Aの準備・交渉・契約・譲渡実行までの流れを解説してきました。
今回は、M&Aの流れシリーズの最終回として、譲渡日以降の「引き継ぎ」と「PMI(Post Merger Integration=統合)」について詳しく紹介します。
M&Aは“契約して終わり”ではありません。
本当に重要なのは譲渡後であり、ここがうまくいくかどうかで、薬局の未来が大きく変わります。
目次
ステップ10:引き継ぎ・PMI(統合)
――買収後の「運営を軌道に乗せる」フェーズ
PMIとは、M&Aの成約後に、買い手と売り手が協力して
事業の統合を進め、シナジー(相乗効果)を最大化するプロセスのことです。
薬局業界では、特に以下の5つの観点がPMIの成否を左右します。
① 従業員の引き継ぎ・コミュニケーション
――離職を防ぎ、安心して働ける環境をつくる
薬局M&Aでもっとも重要なのは従業員の不安を取り除くことです。
人材不足の薬局業界では、薬剤師が離職すると収益に直結するため、最優先のPMI項目です。
■ 具体的に行うこと
- 譲渡直後の説明会(買い手からの会社説明)
- 労働条件・給与変更の有無の説明
- 今後の運営方針の共有
- 個別面談(薬剤師・事務スタッフ)
■ よくある不安のポイント
- 「待遇は変わるのか?」
- 「勤務先の薬局は変わるのか?」
- 「薬局名は変わるのか?」
- 「買い手企業の文化やルールについていけるのか?」
不安が解消されれば、人は辞めません。
逆に、説明不足や噂で不安が広がると、離職につながる可能性があります。
② オペレーション・マニュアル統合
――買収後の現場が混乱しないよう、段階的に整える
買い手企業には買い手企業の“やり方”があります。
しかし、いきなりすべて変更してしまうと、現場が混乱し、ミスや顧客への影響が出る可能性があります。
■ 主な統合作業
- レセコン・電子薬歴の切り替え
- 在庫管理方法(棚卸・発注ルール)
- 調剤過誤防止ルール
- 仕入れルート(卸)の統合
- 買い手グループのマニュアル導入
- PDCAや朝礼など運営スタイルの統一
薬局現場の運営は“流れ作業”の積み重ねです。
そのため、一気に変えず段階的に統合することが成功のポイントです。
③ 在宅医療・地域連携の強化
――薬局の“本来の価値”を高めるチャンス
買い手の中には、M&Aによって
- 在宅医療の拠点を増やしたい
- 医師や訪問看護との連携を強化したい
- 地域包括ケアに対応したい
と考えている買い手もいます。
■ 買収後に行われる取り組み例
- 在宅医療への対応可否の確認
- 訪問診療クリニックとの連携強化
- 地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の取得支援
- 服薬フォロー強化(オンライン服薬指導など)
これは、薬局が“より地域で活躍できる状態”をつくるプロセスとも言えます。
④ 書類・許認可の移管
――薬局M&A特有の重要作業
薬局は「薬機法」や「保険制度」に基づいて運営されているため、
(事業譲渡の場合)譲渡後には多くの行政手続きが必要になります。
■ 主な手続き
- 保険薬局指定の変更
- 薬局開設許可の名義変更
- 管理薬剤師の変更届
- 個人情報保護・セキュリティ体制の更新
- オンライン資格確認の事業者変更
- 税務・社会保険の管轄変更(法人の場合)
この部分を適切に行わないと、
一時的にレセプト請求ができない=売上ゼロの期間が生じる危険があります。
買い手企業と仲介会社が、綿密にスケジュール調整をする必要があります。
⑤ 売上・業績管理の統合
――買収の“成果”が出る仕組みづくり
買収後は、買い手企業の管理手法に合わせて、
業績を一体で管理していく必要があります。
■ よく統合される項目
- KPI(処方箋枚数・薬剤費・技術料)設定
- 月次決算の形式の統一
- 売上報告・在庫報告のルール化
- 在庫最適化(回転率向上/廃棄削減)
買収後に収益が下がってしまう薬局は、多くの場合、
“現場のPDCAが回らない”ことが原因です。
買い手が持つ運営ノウハウを活用することで、
“品質が高く・効率的な薬局運営”が実現できます。
PMIが「うまくいく薬局」と「失敗する薬局」の違い
うまくいく薬局
- 従業員への説明が丁寧
- 統合作業が段階的
- “文化のすり合わせ”を重視
- 買い手と売り手のコミュニケーションが良い
失敗する薬局
- いきなりルール・システムを変更
- 決裁ルート・責任者が不明
- 従業員の不安を放置 → 離職
- 売り手が譲渡後に協力しない
PMIは「書類」よりも人と人の信頼関係がカギになります。
まとめ:PMIは“未来をつくるフェーズ”
薬局M&Aの最終ステップである引き継ぎ・PMIは、
買収の成果を最大化するための“未来づくり”です。
- 従業員の安心
- 現場のスムーズな運営
- 薬局の価値向上
- 地域医療との連携強化
これらを実現することで、M&Aは成功へとつながります。
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