【薬局M&A】M&Aの流れ(第3回)~ステップ7:デューデリジェンスを徹底解説~

M&Aの流れもいよいよ後半に入ります。
前回(第2回)では、「買い手候補への打診」「面談・条件交渉」「基本合意書の締結」までを解説しました。
今回は、その次の重要ステップである「デューデリジェンス(Due Diligence)」について、薬局業界の実務に即して詳しく見ていきます。
目次
デューデリジェンスとは?
――M&Aのリスクを事前に確認する「健康診断」
デューデリジェンス(以下DD)とは、買い手がM&Aの最終契約を結ぶ前に、
対象企業の実態を詳細に調査するプロセスのことです。
例えるなら、薬局の「健康診断」のようなもの。
売上や利益の裏付けは正しいか?
法的トラブルや隠れた負債はないか?
人材・システム・契約関係に問題はないか?
こうした点を専門家が徹底的にチェックし、安心して契約できるかを判断します。
デューデリジェンスの目的
- リスクの把握:
財務・税務・法務・労務などのリスクを事前に確認する - 企業価値の検証:
算定された企業価値(株価)が妥当かを確認する - 契約条件の最終調整:
調査結果をもとに、M&Aの契約条件を調整する
💬 ポイント:
DDの結果によって、「買収価格が下がる」「契約条件が変更される」ことも珍しくありません。
だからこそ、この段階はM&A全体の“山場”といえます。
デューデリジェンスの主な種類
どこまでDDを行うかはケースバイケースではあるものの、
薬局M&Aでは以下のような複数のDDが並行して行われることもあります。
それぞれの目的とチェック内容を見ていきましょう。
■ ① ビジネスDD(事業DD)
事業内容・市場・競合・成長性などを調査し、事業としての魅力・継続性を評価します。
- 処方箋枚数・処方元医療機関との関係
- 在宅対応やOTC販売の有無
- 店舗立地・商圏・競合薬局の状況
- 売上構成・主力顧客の依存度
- 今後の地域医療需要
薬局では、特に「処方元との関係性」や「地域密着度」が評価のカギになります。
■ ② 財務・税務DD
財務諸表や会計データを分析し、収益性・資産・負債の実態を確認します。
- 売上・粗利・人件費などの推移
- 棚卸資産・在庫評価の妥当性
- 借入金・リース債務・未払金の有無
- 税務上のリスク(過去の申告・滞納・節税スキームなど)
💬 注意:
薬局では「在庫(医薬品)」や「調剤報酬請求の未収入金」が多く、
財務リスクの見落としが起こりやすい点に注意が必要です。
■ ③ 法務DD
法的リスクや契約関係をチェックし、コンプライアンス体制が整っているかを確認します。
- 定款・登記簿・契約書類の確認
- 保険薬局指定・薬機法上の許可状況
- 卸などの取引先との契約関係
- 訴訟・紛争・行政処分の有無
薬局では、薬機法や保険制度の改定などが関係するため、法務リスクが複雑になりやすい業界です。
■ ④ 労務DD
従業員の雇用状況・労働契約・人事制度を確認し、雇用リスクを把握します。
- 雇用契約・就業規則・給与体系
- 残業・休日・有給管理の実態
- 離職率・人員構成(薬剤師・事務員など)
- 労働保険・社会保険の加入状況
薬局では、特に薬剤師の雇用継続と人材定着が重要です。
この段階で労務トラブルが発覚すると、買い手が大きな不安を抱えることになります。
■ ⑤ IT・システムDD
システム面の整備状況やセキュリティを確認します。
近年は「電子薬歴」「オンライン資格確認」などのIT対応が進む中で、
ITインフラの整備度合いがM&Aの判断材料になることも増えています。
- 電子薬歴・レセコン・POSの種類と連携状況
- 個人情報保護・セキュリティ体制
- クラウド導入・データバックアップ体制
- DX対応・将来のシステム更新コスト
💬 ここでのポイント:
「システムが古い」「データが属人的」な場合は、
PMI(統合)後に追加投資が必要になる可能性があります。
デューデリジェンスの期間と進め方
通常、DDには2~4週間程度かかります。
DDの進め方はケースバイケースですが、中規模以上の薬局のM&Aで、しっかりと費用をかけてDDを行う買い手の場合、複数の専門家チーム(会計士・弁護士・社労士など)に依頼して調査を行います。
逆に、小規模な薬局M&Aの場合、専門家に払う費用の削減のため、買い手自身で各種資料を確認してDDを行う場合もあります。
売り手側は、仲介会社と連携して次のような資料を準備します。
- 決算書・総勘定元帳・試算表
- 薬剤師名簿・雇用契約書
- 保険薬局指定書・営業許可関連書類
- 賃貸契約・主要取引先契約書
- 在庫リスト・レセプトデータ
準備がスムーズに進むほど、交渉の印象も良くなります。
まとめ:信頼を築くデューデリジェンス
デューデリジェンスは、単なる“チェック作業”ではありません。
「双方が安心して契約するための信頼構築プロセス」です。
薬局オーナーとしては、
- データを正確に整理しておく
- 疑問点を隠さず、正直に共有する
- 仲介会社・専門家と協力して対応する
この3つを心がけることが、スムーズな成約につながります。
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